今朝のココア

こんな日々を愛おしく思って

生きてる。

 高速道路で事故ってしまった。


 “スリップ事故多発”という電光掲示板の文字が目に入りながら、
運転しててまったく滑る気配がしなかったことと、タイヤを取り換えたばかりだったこと、
そしてスリップというものがどんなものか、どれだけよく起こることなのかわかっていなかったことで、
自分に起こるとはまったく予想していなかった。
他人事だと思っていた。
何にもないカーブで、そんなにスピードも出ていなかったと思う。
特に何かに滑ったという感覚もなく、いきなり滑った。


 原因は、振り返ってみれば俺。
スリップ多発という警告をみながら、いつも通り普通に運転していた。
カーブを曲がる時も特に何の意識もせいず、いつも通りに...。
もう少し慎重に、たとえばカーブの時に速度をもっと落とすとか、そうしてたら事故は防げたんじゃないだろうか。
でも同時に、思う。どっちにしろ避けられなかったのかもしれないと。
レッカー車の人の話では、昨日も同じ場所でスリップした車を移動したという。
事故が起こりやすい場所。
オイルなんかが流れていたのかもしれないし、水がたまりやすい場所なのかもしれない。
...そう言ったのは、俺に対する慰めか、本当にそう考えているのか。



 幸い、ただの自爆。
後続車がいなかったために、壁に激突しただけで済んだ。
誰も巻き込まず、車に乗っていたのは俺一人だけ。
エアバックも出て、俺は全身を打っただけ。
360℃も回転したから、後続車が来てたら死んでた。
だから、命があっただけでも本当に良かったんだ。


 でも、やっぱり思ってしまう。
せっかく兄貴にできた楽しみ。
せっかくおばあちゃんが協力してくれて買った車。
身体がどんどん不自由になる母にとっての移動手段。
お父さんも助手席に乗ることをいつも楽しみにしていた。


 そんなものをぶっ壊して、俺はなんて謝ったら良いのだろう。
不思議なんだけど、スリップして車が横を向いた時、瞬時にそんなことを思った。
「ごめんなさい。」と。
スリップした直後も、車をぶっ壊してしまったことにショックを受けて、しばらく何もできなかった。


 きっとお母さんもおばあちゃんも言うだろう。
命があれば良い、と。
大きな怪我がなくて良かったね、と。


 その通りなのだけど、
実際そうなのだけど、
俺は...こんなことで落ち込んでるわけにはいかないんだけど、
こんなことで落ち込む自分を変えていきたいんだけど、
どうしても...考えてしまう。



ゴメンなさい。


 家族を支えるとか言って、俺は家族の足をひっぱってる。
将来的に支えられる保証もないのに、普通の仕事が得られることを理由に家族の中心に居座っている。
威張ってる。
それなのに...こんなだ。
大切なお金をたくさん無駄にした。


 一体いくつトラブルを引き起こせば俺は学ぶのだろう。
一体いつになったら、俺はまともになれるのだろう。


 マシな人間になりたい。
自分の好きな誰かの隣に堂々と立っていられるような人に。



 ゴメンね、みんな。
本当にゴメン。



 でも、落ち込むのはここまで。
もう前を向かなきゃ。
生きてる以上、自分の背丈じゃ届かないものを取ろうとしている以上、無傷でいられるはずがない。
他者を傷つけ、自分も傷つき、それでもなお、
前へと進むものであれ。


 俺が向くのは、前だ。