今朝のココア

こんな日々を愛おしく思って

社会貢献

 先日、「仕事の流儀」というテレビ番組を観た。ある特定の分野の前線で活躍する人にスポットを当てたこの番組で、その時取り上げられていたのはまだ高校生でありながら、プログラマーとして既にITの分野で活躍をしている男の子であった。彼は言う。お金を稼ぎたいんじゃない。自分の仕事によって、「人類を前に進めたい」のだと。
若干15歳の少年から出たとは思えない大言である。おそらく、こういった夢に溢れ、大言に伴う行動力を持った者が実際に社会に大きな変化や革新をもたらしていくのであろう。しかし、一方で所謂「普通の人」である私たちの行動一つ一つが積み重なって社会に変革がもらされてきたという事実もあるはずだ。もしそうであれば、人類を前に進めることはできずとも、私は周りにある環境を少しでも良くすることに力を注ぎたい。社会にとっての貢献度で考えれば、とても小さいものであるかもしれないが、それはやはり程度の問題であり、プラスであることに変わりはないのだ。
 現在、私の目の前にあるのは、私の職場である。さして大きくもない病院の、内科病棟である。この職場の環境を改善していくこと、これが現在の私にとっての社会貢献である。
 病棟の改善点は三つある。一つ目に、働くスタッフの方向性を示す目標を作ること。二つ目に、皆が学習し、知識や技術のレベルを上げる環境を作ること。三つ目に、チームとしての連携を強化し、業務の効率化を図ることである。
 目標と言っても、職場に求めているものがスタッフ一人一人異なる。しかし、その中でも共通するものを拾い上げ、具体的な指標をすることはできる。具体的な目標、それも短期・中期・長期と掲げることは、スタッフのモチベーションを向上させる効果があると古くから心理学の実験で証明されている。
 どの職業にでも言えることであると思うが、医療の現場は特に技術の発達が著しく早いと言われている。十年前は常識として皆がやっていたことが、実際は間違っており、現在は真逆のことをするようになった、ということは珍しくない。どの家庭にもあった傷口に吹きかける仕様の消毒液が姿を消したのはその最たる例であろう。そのため、看護師となり、看護を技術を一通り学んだ後も学習を継続する必要がある。学習するかどうかは、それぞれの意識の問題とも捉えられるが、スタッフの知識や技術の向上が前述した目標につながるとすれば、病棟として学習する機会や学習しやすい環境を作っていく必要がある。具体的な取り組みとして、他病院では「ノロウィルス患者への対応」などのテーマを決め、当番となったスタッフがそのテーマについて研修会に参加するなどして学習し、病棟でプレゼンテーションを行い知識をシェアする、などの活動が行われている。
 最後に、医療業務において最も重要とされるチームワークを強化していく必要があると考える。三人寄れば文殊の知恵というが、それぞれの異なった技術がある他職種が相談し連携していくことで、問題を多角的にみることができ、またアプローチの幅も多いに広がってくる。同職種であっても、それぞれバックグラウンドは異なるため、当然出来ることの種類も異なる。これらを最大限に生かすシステムを考えることは業務を効率化させることに繋がり、そこから生まれた余裕は、さらに質の高いサービスを提供することに繋がると考えられる。
 職場の環境が改善して、それはどこに繋がるのだろうか。病棟で過ごす患者の精神と身体の安らぎ。スタッフの充実感。そこから繋がるそれぞれのスタッフのプライベートの時間での余裕。どれも小さなものであるかもしれないが、積み重なっていけば社会にとってのプラスになることを、私は疑っていない。現在の私にとっての社会貢献はこれだ。