今朝のココア

こんな日々を愛おしく思って

いつかまた...

 生きてて良かった。そんな風に思える夜を。



 ●ブランカが亡くなった。


俺は看護師の卵のくせに、その時も見極められずに、その日は出掛けてた。
大した介護もしなかった。
18年間、特に思春期以後は、どれだけ慰めてもらったかわかんない。
バイトの帰り。カナダから帰ってきた時。
小屋の前で「疲れた〜」って言って座る俺を、いつも尻尾振って迎えてくれた。
それでどれだけ助けられたか。
だから、いつか返そういつか返そうって思ってて、思ってるだけで、
そのまま死なせってしまったから、
くやしくて...悲しかった。


 困るよな。
家に帰ってきてから、家族に会う前に洗面所に顔を洗いに行ったら、
鏡に映ったのは、俺がガキだった頃と同じ泣き方をしてる、ぐちゃぐちゃのえらく老けた顔だったから。
あれから18年、そりゃー俺もお前は死ぬし、俺は老ける。
それだけ一緒にいたんだ。



 うちに来てお前は幸せだったか?
大きな庭を駆け回って育った幼少期から、鎖につながれてコンクリートの上で寝てるだけの日々に代わり、
一度はそのせいで死にかけて食べれなくなって...。
せめてこの家に来てからは、幸せだと感じてくれたのなら良いな。





 今日は葬式。
丸二日間冷やし続けて、亡くなった時そのままの姿で葬儀場へ。
わがままを通して良かった。綺麗な葬儀場で良かった。
丁寧に扱われて良かった。
家族に任せなくて、やっぱり良かった。
最後をみれて、本当に良かった。












 なぁー、お前は俺がそんなに背負わなくても良いって言う。
背負わなくても家族は大丈夫だって。ちゃんと上手くやっていくって。
深夜に俺が家に帰ってきて、酔っ払ってる使えない男が二人。
葬儀をどうするかの選択肢も用意せず、“話し合い”っていう形だけの集まりを始めようとする、
そんな家族が上手くやっていくって?時間が解決するって?
俺にはどうしてもそうは思えないよ。



 少し休んで、仕事をしよう。
人に生まれたからには、自分で勝ち取ったものを誇りたいんだ。授かったもんじゃない。
俺は家族っていう地盤からこの手で作って、その上にあるものを誇るんだ。