揶揄。

　それは一週間前。

　英語のテストの３日前。元カノに英語を教えて欲しいと頼まれ、家の近所のモスバーガーへ。
勉強開始してからいくらも立たないうちに彼女が挙動不審になる。
見るからに落ち込んだ顔をしている。
“私、不幸デス。”オーラを出してる。
“助けて・助けて！”って全身で言っている。

...と申されましても、実習期間でもなければ、実習が来月から始まるというわけでもない今の時期に彼女が悩むのはどーせ男問題でありまして、元カノの（ドロドロしてそうな）男関係の問題を心穏やかに聞けるほど俺は人間できてないわけでして....つーか、元カノの友達からもうすでにドロドロした話を少し聞いているわけでして...。だから、やっぱりその...そんな彼女の話を優しく聞いてあげるってのは無理ってものがありまして...。

“どうしたの？なんかすっごく悩んでそうだけど、無理にとは言わないけど、俺で良かったら何でも聞くよ。”

　はい、予想通り、ダメ男クン浮き出てきました！
話聞くだけでストレスになるのわかってるのに、ここで優しくしたらまた甘えられちゃって、せっかく半年以上かけて別れたのに、元の木阿弥になっちゃうかもしれないのに、友達に散々“しんちゃんがそうやって優しくするからＫ（元カノ）はしんちゃんから離れられないんだよ！”忠告を受けているにもかかわらず.....これですよ、みなさん！！

　だけど、さすが俺の元カノ！悩み事が俺の想像の上を行ってたＹｏ！！！
俺も彼女も散々お世話になってるクラスの“ザ・良い人”“女神様”のＡちゃんの、やっと数年ぶりにできた彼氏と...なんと浮気しちゃっているとのこと。

　wow!

　彼女曰く（ほんとかどーか神様にしかわかんねーけど。）、別に彼のことが好きではないとのこと。
シンスケに戻っちゃいけないって思って、我慢して我慢して、どーしよーもなく寂しくなった時にそのことを彼に相談したら、彼が“なんとかしてあげる”と言ってくれたのだと。
ちなみに彼は一年以上前に一度元カノにアタックしているらしい。（そしてかわされているらしい。）
ちなみに彼の友人曰く、彼の外見のタイプは元カノであって、Ａちゃんは外見はタイプではないらしい。
ちなみにクラスのＡちゃんは超純情、頭ん中ロマンスでけっこうできてるんじゃないかって人ね。

彼氏さ...Ａちゃんと別れたら半殺しにしたいよね。
Ａちゃんに秘密で、Ａちゃんで満たせないからってＡちゃんの友達で性欲満たしてんじゃねーよ。

もちろん元カノもサイテーだけどさ、なんで辛い時にいっつも優しく話聞いてくれるＡちゃんにそんなことできるのか、俺にはまったくわかんねーけどさ...。

　俺自身、Ａちゃんには本当にお世話になっている。落ち込んでいる人を支えるってのは俺ってな弱い人間には本当に大変で、Ｋちゃんの実習中とか支えるのが辛くて辛くてどうしよーもなくなった時に電話で話を聞いてくれたのはＡちゃんだし、いつも優しく俺に好きな本の話をしてくれる、そんな恩人だ。

Ａちゃんのこと、俺は大好きなんだ。

　...とくれば、優先順位はもう最初っから決まってる。
Ａちゃんが最優先。そんな彼氏と付き合ってるのが幸せかどうかはわかんないけど、それは本人が決めることだ。
盲目だろーが幸せなら良いってのが俺の考えだ。
ずっと二股してれば、Ａちゃんにバレる確率も増える。何より、何かの拍子にバレちゃった時、Ａちゃんのダメージは計り知れない。
やっちまったもんはしょーがねー。
でもここでストップすれば、数年ぶりに彼氏ができて幸せの絶頂（なのかほんとは知らねーけど。）は傷つけないで済む。いや、いつかバレた時に傷つくかもしれないけど、「一時の過ちでした」と「ずっと二股かけてました」ではダメージが違う気がする。

...そんな計算を、元カノが泣きじゃくって話すのを抱きしめて聞きながら、俺はしてた。
計算終了。Ａちゃんが最優先。そこは揺るがない。
Ｋをひっぺがしてやる。

　“あのさ、もし俺とまた付き合ったら、Ａちゃんの彼氏と別れてくれる？”

　言葉巧みに、表情はマジメに、声は優しく、身体は抱きしめたまま。
逃さない。
考えさせない。
選択権は与えるフリしても、実際には与えない。
絶対ひっぺがす。
俺で我慢しろ。
....Ａを傷つけるな。

　いやー、なんとも悪い男になりましたね、たった一年で。
一年は、悪い男を作るには十分すぎる時間だ！

　ってなわけで、別れる約束だけさせてその日は終了。
俺はまた昔の状態に戻るだけだ。
別に大丈夫。

　でも、身体は正直で、その日を境に体調が悪化。
気が付けばＫのことを考えて、気分が憂鬱になってる。
なんで俺にだけこんなに問題が降りかかってくるのだろうと、
首つっこんだのは自分自身なのに、そう考えてしまう。
胃の調子は悪くなって、朝早く起きることが多くなった。
約束はしたけど、できることは全部したけど、
それでもＫがきっぱりＡちゃんの彼氏と別れてくることは想像できなかったからだ。
自分で決断ができなくて、判断はほとんどが他人任せ。
そんな彼女を、味をしめた男が簡単に手放すわけもない。

だけど、そこは俺！ストレスに慣れきっているというか、
もうストレスなんて友達だから（テヘっ☆）、対処はキチンとする。
今までこういう事態を想定して、嘘ついて処方してもらって貯めておいた精神安定剤や胃痛用の頓服薬をフルに使って一週間はなんとかしのいだ。
受診して新しく睡眠持続系の薬ももらった。

　テストや課題の提出も挟んで、ストレスを溜めこんだまま一週間後の日曜日。
またモスで二人で勉強してた。
話を聞いてみたら、ななななななななんと！Ｋは電話で彼に別れを切り出したのだという。

　まぁー相変わらず彼からはその後も電話が来てて、まだちょっとだけ迷ってる風だったけど、
よくやったＫ！！
だいぶ見直したぞ！！！！

そこでストレスは終了。
一番の懸念事項だった、彼女をひっぺがすことができないかもしれないということはなくなり、
俺のストレスは消滅。

もちろんここで彼女のハートをがっちり掴んでおかないと、また戻ってしまいかねないから、
その日は予定を変更して寝不足＆疲労がたまりにたまった身体を引きずってホテルへＧＯ！

　はい、とりあえずは第一段階クリア！
俺はやれることはやったよ。
間違っていることたくさんあるだろうけど、自分の納得いくまでやったよ。

　...と、そんなところで話はいったん終了するはずなのだが....。
一昨日から首の裏と鎖骨あたりに小さな発疹が。
“やっべ、ダニにでもやられちゃったかな。”
とすぐにベッドのシーツを交換して、布団を干す俺、
昔皮膚科に勤めてた俺の母親にも診てもらって、ダニかなにかではないかということに。
だけど、今日学校でクラスの出木杉クン的なポジションのＭ君に軽く聞いてみたら、
“それ、帯状疱疹じゃね？”って。
ん、なにそれ？
特徴は身体の半身にのみ帯状にできることらしい。
何が原因でできるの？疥癬だったらダニだよね？でも発疹に穴とかの特徴ないし...

“原因は...ストレス。”
この一週間の出来事をすべて知っているＭ君は、とても言いにくそうに俺にそう伝えた。

　“あ...あ〜、なるほどね。”
そゆことー。
５秒後にはネットで調べる。
症状、原因、帯状疱疹の写真をチェックして...。
“あ、これ帯状疱疹だわ。”

　虫さされ的なものだったら、軟膏塗っておけば２・３日で治るだろうと思ってた俺。

帯状疱疹はどういう形で何が出るかも不明ということもあり、早めの兆候を見逃さず、症状を過小評価しないことが大切である。特に顔面神経麻痺などは湿疹が消えても治療が遅れるとなかなか治癒しないこともある。顔もしくは体にひどく痛い皮膚症状がでたら皮膚科に行くこと、また耳鼻科領域で顔面神経麻痺などが出たら、すみやかに治療に専念すべきである。

　....と、wikiには、“帯状疱疹なめんな、ゴルァー！！！”と書かれていた。
放課後、皮膚科へ。
今週末には俺が主催する合コンがあるんだ！
俺自身は一回も行ったことないのに、主催するんだ！！
首と鎖骨と胃がキリキリ・ズキズキ痛んでたらキューピットなんかやってられっか！！！！！
こんなもん、３日で治してやるわ！！！！！

　“あらぁー、これは帯状疱疹ね。痛いでしょ？”と医師のおばちゃん。
“あ、いや俺胃の方が全然痛いんで、これなんともないです。”と俺。

　さすがは俺！帯状疱疹だという確信を持ってからは対処が速いし、的確だ！！
とか考えていたのだが、その後高い授業料を払うことになる。

　受診が終わって、処方箋をもらって皮膚科の裏の薬局へ。
“７８００円になります。”
“....はい？”

　忙しくて、あんまり受診している時間（というか金！）がない俺は、まずは薬を４日分出すと言った医師にそのことを告げ、７日分まとめて出してもらうことにしていたのだ。
...にしても、学生ってことを伝えてあるのに、なんで帯状疱疹用の経口の抗ウィルス薬は高いんだって教えてくれないんだＹｏ！！！！
なんとその薬は一錠５００円するらしい。
それを毎食後！２錠ずつ！！一日６錠飲むのだ！！！
“これ一錠で、ランチ食べられちゃうのよ！”とケラケラ笑う薬剤師のおばちゃん。
あれ、俺の普段飲んでる薬は一錠10円くらいなんですけど...。

　“すいません、４日分に変更できませんか？あの、僕......自分の免疫力を信じてみます。”

　それでも受診代と合わせて軽く5000円以上かかった今回のお病気。

...不幸だぁ〜！！！！！！！（中二風）